この作品を書いたころは、精神的に少々荒れていました。キューバの音楽とダンスを知り、『KYOKO』という映画を準備していたのですが、脚本は書けないし、製作資金の目処もたたないという、絶望的な日々を送っていました。
オタクの青年とおばさんたちの、「殺し合い」の物語のアイデアが浮かび、苛立ちとともに、書きはじめました。でも、ユーモアは忘れないようにしようと、心に決めて書き続けました。
ヘリが住宅街を飛来する表紙アニメーションは、この作品の、そんな独特のムードを適格に象徴しています。
村上龍
(アニメーションは、Apple Booksのみ収録しています)