「引きこもり」という言葉を知ったのは、90年代の初頭で、読者からの手紙でした。「わたしの兄は、10年近く家から出ていません」と書かれていて、びっくりしました。
ただ、この作品は「社会的引きこもり」の「実態」を描いたものではなく、社会のダークサイドを、引きこもりの青年の行動を通してあぶり出すという内容・構造になっています。「社会的引きこもり」そのものについては、その後、『最後の家族』という作品で、テーマとしました。
表紙アニメーションは、執筆当時の、インターネット掲示板の、不気味な匿名性、ネガティブな側面を表現してみました。
村上龍
(アニメーションは、Apple Booksのみ収録しています)