「これは、破滅的なストーリーである」あとがきにそう書いた。単行本上梓とほぼ同時に、日本ではバブルが弾け、破滅が訪れた。イビサは、快楽と倦怠の島だ。主人公の女は、東京を脱出し、パリに降り立ち、モナコを抜けモロッコに渡り、やがて、彷徨う蛾が妖しい光に吸い寄せられるように、イビサにたどり着く。地獄巡りの旅でもあり、究極のエクスタシーに浸り続ける旅でもある。黄金の泡(バブル)が真っ赤な鮮血に変質するラストまで、主人公とともに旅をしていただきたい。
表紙アニメーションは、都市から都市への移動と、固有名詞の崩壊をイメージして制作した。
村上龍
(アニメーションはApple Booksのみ収録しています)