この作品はバブルの絶頂期に書かれ、崩壊時に刊行された。いろいろな意味で「抑制」が機能しない時代で、当時わたしはおもに「快楽と退廃の果て」を描いていたが、いずれ「もうこの先はない」という小説を書くという予感があった。THIS IS IT、それが本作である。もう今後はSMとドラッグを描くことに飽きてしまう、そう思いながら書いた。欲望と快楽と退廃のあとは、徒労感だけが際立つ。表紙アニメーションは、エロティックで、かつユーモアが漂うものになっていて、あの時代を象徴できたと思う。
村上龍
小さな出版社を営む堀坂進太郎の家に、突然侵入してきた女性、ヒロミ。彼女が残した謎のメッセージをきっかけに、堀坂は奇妙な事件に巻き込まれていく。エロティック、かつユーモアの漂う表紙アニメーションと、多数のCGを挿入。
(アニメーションは、Apple Booksのみ収録しています)