◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《94》 被災地とワクチンで防ぐことのできる病気 2013年12月25日

震災直後の当院の救急外来で、イヌにかまれたために受診された方が多かったことを第72回で紹介しました。実はもう一つ、目立った受診の理由があったのです。

それは怪我です。

特に、瓦礫などの処理をしていて、釘を踏み抜くことによる受傷でした。消防の方々など、しっかりしたブーツを履いて作業をしていらっしゃりますが、瓦礫の釘は大きな太いものも多く、ブーツを貫通して受傷してしまった方もいらしたのです。
その他、多くの泥まみれとなった資材やガラスの破片によるものなど、作業中は怪我をするリスクが多く存在します。

何が気になるかというと破傷風です。破傷風菌は世界中の土壌などに広く分布して存在しています。傷口などから体内に侵入し、3〜21日の潜伏期間の後に、開口障害や嚥下困難などの筋肉の症状が出現。痙攣や呼吸困難、窒息など、死に至る病です。

既に三種混合ワクチンの普及により、多くの方が免疫を持っており、自分がなるはずが無いと思われる方も多いかもしれませんが、実はいくつか落とし穴があります。

まず日本では、1968年以前は破傷風を含まないワクチンが主に使用され、また1975年〜1981年には副作用により三種混合ワクチン接種が中断されています。このため、その時期に生まれた方は破傷風の予防接種を受けていない可能性があります。そして、小児期に打っていても、徐々に破傷風に対する防御力が下がり、30歳を越えた頃には追加接種が必要です。それを示すように、日本で起こる破傷風の多くは(数は多くないものの)30歳以上の成人で、その致命率は数十%にのぼります。

特に当院で破傷風の方が発生している訳ではありません。ただ、上記に述べたような怪我の方が、近ごろの救急外来記録を見てもいらっしゃいます。その受傷機転は瓦礫の処理や家屋の整理などです。ボランティアの方々、住民の方自身が色々な作業を行う際の受傷です。

もしかしたら、東京や離れた場所に住んでおられる方は全ての場所が既に片付いているとお思いになるかもしれません。実際は決してそのような状況ではありません。以前、避難区域となっていた場所は、いまでもまだまだ片付いていない所が本当に多くあります。もう3年経とうとする今でも、です。

欲を言えば、ワクチンで防げる、重症化を避けられる病気は破傷風だけではありません。この時期で言えばインフルエンザや、肺炎球菌ワクチンなどもそれに当てはまります。我々医療者が、もっとしっかり皆さんにお伝えできれば良いのですが、なかなか伝えられていません。

ボランティアの方々の数は以前に比べれば減りました。ただ是非、多くの方にワクチンで防ぐことのできる多くの病気があることを知り、接種して欲しいと思います。



2013年夏頃の浪江町での写真です。2011年ではありません。

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