◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《93》 検査から始まる対話。限られるその時間 2013年12月17日

ひらた中央病院(福島県平田村)で12月初旬から、小児を対象としたホールボディーカウンター(WBC:Babyscan)の稼働が始まりました。早野先生が中心となってキャンベラ社が作成しました。世界で初めての試みです。イメージとしては、従来の立位型WBCであるFastscanを横に倒して、縦の長さを半分に縮めて、下の遮蔽を厚くしたような構造になっています。

個人的には、家のお風呂(といっても色々でしょうけれど)ぐらいの大きさかと思っていましたが、実際にはかなり大きくてびっくりしました。横幅で2m近くあります。通常のFastscanはスキャナが2本ですが、Babyscanは4本、遮蔽も5.7トンとかなり強力になっています。

130cm以下の小児なら誰でも計測できて、4分間の計測で検出限界は50 Bq/bodyといったところです。前回のブログにも、そのスペクトルの綺麗さを掲載させていただきましたが、Fastscanは2分計測で検出限界250Bq/body程度ですので、その性能のすごさがおわかりいただけると思います。

遮蔽が十分にされた日本国内に数台ある、精密型のWBCと同様の性能です。私がウクライナで見た厚さ10cm以上の鉄の扉で包まれたWBCとも同程度です。

すばらしい性能を持っています。しかしながら、敢えて言うとこの器械は、放射線被曝を計測し診療する医療と、特に小さなお子さんを持つ住民の方々の対話のための器械(コミュニケーションツール)だと思っています。

少しドライな言い方かもしれませんが、福島県内の現状の内部被曝がどの程度か、どのような分布をしているかというサンプリングという意味では既に決着がついています。ほとんどの成人でも放射性セシウムは検出しなくなっていることは、このブログで何度も紹介しているとおりです。

検出限界以下のため、細かい値が正確にいくらか分からないという話はありますが、セシウムによる内部被曝量が大人であれば、年間0.01mSv以下となることがほとんどです。

内部汚染が起こりうる場合は食品摂取によって家族単位で起こることが多く、その一家のおじいさんなどを計測すれば、全体の家の内部汚染の傾向を知ることができることが分かっています。今回のBabyscanの導入で、小児が計測できるようになりましたが、その結果によって、今までの検査結果と全体像が大きく変わることは無いと思います。

こうした状況で、この器械の意味は、しっかり子供を計測し、その結果をお互いに向き合いながら一人ひとりと話をしていくことなのだろうと思います。

ただ、現実にはまだまだ問題があります。最大の問題は、説明をする人員が足らないことです。一家族に15〜20分ずつ話をしても3時間で10家族ぐらいが限界です。放射性カリウムの値を見て、これは大丈夫なのか?といった基本的な話、検査よりも行政に対する強い不信など、話す内容はセシウムの検査結果だけでは無く、時間もかかります。ひらた中央病院では、阿部さんを始めスタッフが頑張ってくれています。

運用面でも改善が必要です。大人とは違うので4分の検査時間内に検査をできるとは限りません。泣いてしまって、なだめながら検査をすることもあります。うまくいかず、どんどん後ろに時間が押すと、次の子供の機嫌が悪くなり、説明をしっかり行う機会を失います。

最初のWBCが稼働を始めた時と同じように、淡々と検査を行い、説明しながら、現状をお伝えしていくしかありません。検査を受ける多くの方々が、結果から前向きに生活できるようになってくれることを望むばかりです。

今回の機械導入に尽力された早野先生を始め、ひらた中央病院のスタッフ、キャンベラ社の方々、多くの方々に支えられて実現しています。心から敬意を表したいと思います。



Babyscanの外観です

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