◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《92》 被曝量は十分低いと伝わらないもどかしさ 2013年12月10日

だんだんと寒くなり、布団から出るのがつらくなってきました。浜通りに来るようになってから私にとって3回目の冬です。
これまで放射線に関しては、色々な場所で粛々と検査が行われてきました。放射線以外の問題も多くありますが、2013年12月現在の相双地区(相馬市、南相馬市)での内部被曝、外部被曝検査の現状を、少しまとめてみたいと思います。事故直後の話では無く、現状の生活についての話を主にします。

まず、内部被曝です

内部被曝検査結果について、相馬市( http://www.city.soma.fukushima.jp/housyasen/kenkou_taisaku/WBC/index.html )南相馬市( http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,11982,61,html )の現状の最新データは、それぞれのリンク先で公表されています。
それぞれの説明については、第71回第64回も参考にしてください。

セシウムを主とする放射性物質は、体から生物学的半減期4カ月ほどで体内から排泄されていきます。既に子供の99%以上、成人の約95%以上からはセシウムを検出しません。現状で体内に蓄積していないことから、内部被曝について、「現状の生活上の慢性被曝は非常に低い」状況を維持しています。

器械には検出限界がありますが、その検出限界は十分に低く、年間の追加内部被曝は1mSvから見て2桁以上の桁で少ないというのが実態です。チェルノブイリでXxxが……という話と状況は全く異なります。
第76回も参考にしてください。

内部被曝の原因は、あり得るとすれば汚染食品からの摂取が主です。そして、それは一部の汚染しやすい食材を選択的に集中的に食べることでしか起きていません。実際の食品検査結果を見ていただければわかりますが、地元の食材がまんべんなく汚染される状況では決してありません。水道水も同様に十分に安全性が担保されています。

主な理由は、セシウムの土壌との結合です。強く土壌と結合するため、水道水が汚染されず、土で作る農作物の汚染が低く抑えられます。

現実の日常生活では、その地域で出荷制限が既にかかっている食べ物を未検査で継続的に食べるようなことをしなければ、年間の追加内部被曝が1mSvとなるようなことはなく、実際はその半分にも到達していないのです。

空気からゼロでは無いと言う話はできますが、除染作業であっても内部被曝は高くありません。

その一方で、今の段階で必要なことは継続的な検査態勢を維持すること。それに、出荷制限が既にかかっている食べ物を未検査で継続的に食べる方(いわゆる値の比較的高めのロングテール)に対して、しっかり対応していくことです。

そして、この部分を行い、検査結果を一つずつ丁寧に説明していくスタッフが少ないことが現状の大きな問題の一つです。(参照:第65回第83回

実際に、南相馬市立病院、相馬中央病院の外来で全員フォローを行っていますが、しっかり内部汚染は値が下がっています。

第86回でも述べましたが、サンプリングして全体の傾向を見るというフェーズではなく、値の高い方から何が問題なのかを知り、一人ひとり対応することが重要なフェーズになりつつあります。

小学生より小さい子供については、現実的には子供より体の大きくて、食事摂取量も多く、放射性物質の排泄速度の遅い大人を計測すれば、被曝量について十分情報が得られはしますが、もちろん子供本人を計測したいという希望があります。
Babyscanという器械が、ひらた中央病院に導入されました。結果や状況については、また紹介したいと思います。

それに加えて、検査にいらっしゃる方の数も減ってきておりますが、相馬市、南相馬市共に現状では数回まで自由に検査を受けることができますし、子供の検査は学校検診化され、定期的に検査がなされるようになっています。
南相馬市は学校検診での結果も公表しており、小中学生98%以上を検査し、全員検出限界以下でした。
第82回も参考にしてください。

次に外部被曝です

外部被曝について、相馬市のガラスバッジの結果( http://www.city.soma.fukushima.jp/housyasen/kenkou_taisaku/glass/index.html )が公表されています。

小児を対象にしていますが、追加の外部被曝線量が年間1mSvを越える方はほとんどいなくなりました。事故の影響で、震災前に比べて空間線量率が上昇したことは確かでしょうが、相馬市の町中の生活での被曝量は西日本での被曝量と大差ありません。

これらをあわせると、内部被曝と外部被曝を併せて、現状の生活で追加被曝線量が年間1mSvを越えない小児がほとんどです。

もちろん、もう少し空間線量の高い地域だと、ガラスバッジの結果は高くなります。しかし、空間線量を用いて、屋外に8時間、家中に16時間という生活の人で推定されている被曝量は、実際の生活上の被曝量より過大な評価になっていることが多いことが分かってきています。

簡単に言うと、0.23μSv/hの場所で追加被曝線量が年間1mSv程度と計算されていますが、実際には、0.5とかそれ以上ぐらいの場所ではじめて、追加被曝線量が年間1mSvに到達する場合が多いです。理由は学校を主とする遮蔽の強い空間での生活時間が長いからです。このため、小児の方が、大人に比べて被曝量が少なくなる傾向にあります。

より被曝を下げる場合は、「長時間生活する場所」の線量を下げる努力が必要です。除染も全て行うというより、どこを行うかが重要なのです。

上で説明したように、現状の相馬市、南相馬市で日常生活を送る上での放射線被曝リスクは十分低いのです。それにも関わらず、東京や西日本の方に伝わってはいません。さらに言えば、地元の高校生にも十分には伝わっていません。

子供たちには授業など、何かしらの形でしっかり伝えていくべきだと感じています。相馬高校を始め、いくつかの学校で放射線の授業が進んでいます

最終的に、子供を守るのは継続的な検査と、放射線に対する知識ではないかと思っています。もちろん相馬市、南相馬市だけではありませんが、多くの取り組みが今まで進んできました。これからもみんなで力を合わせて進んでいくことができればと感じています。



Fastscanを用いた約80kg男性(上)とBabyscanを用いた約10kgの子供(下)です。スペクトルの綺麗さを見ていただければと思いますが、圧倒的な性能です。今までのFastscanでの小児の測りにくさを一掃しています。 また後日ご説明します。

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