◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《79》 「高齢化」を取り巻く問題が突然顕在化した 2013年9月9日

南相馬市立総合病院は震災前、14人の常勤の医師がいました。震災後その数は4人まで減りましたが、現在は21人まで回復しています。医師の数だけで言うなれば、震災前よりも増えています。今年より研修医の受け入れも始まり、福島県立医大をはじめとして多くの場所から赴任していらっしゃいます。

しかしながら、230床、4病棟ある内の3病棟しかオープンはしていません。一つには看護師さん不足があるからです。

医療は医師だけでは全く成り立ちません。もちろん、医師がいなければ、それはそれで困りますが、看護師さん、リハビリさん、薬剤師さん、ソーシャルワーカーさん、事務スタッフの方々など多くの方の力を結集しなければ実現しません。特にご高齢の方に対する医療は、その傾向が強くなります。

今回の震災後、「急速」な「高齢化」をキーワードにして、病院が担当する部分が増えました。「放射線による何か特有の「病気」が増え……」といったことを言われることがありますが、それは実態と明らかに乖離しています。

では、いわゆる血圧、糖尿病、コレステロールなどの慢性疾患が明らかに増えているとお考えでしょうか。これは、私の個人的な印象ですが、通院している方々で、上記の慢性疾患が悪化し続けているとは感じていません。

震災後、一時的に悪化されてはいましたが、その後、外来ではやや持ち直した方が多いように思います。もしかしたら、使用薬剤はやや増えたがコントロールはできている、という方は増えたのかもしれませんし、病院に通っていない方は、その限りでは無いかもしれません。

しかしながら、明らかに「予備能力」は落ちているように思います。(参照:第35回「日本の未来を浜通りに見る」)

上記で紹介した内容ともかぶりますが、震災前なら入院の必要が無かったのに、(若い家族が少し減り)家族構成が変わって介護力が低下したため。住んでいた場所が変わり、より生活が不便になったため。仮設住宅の共同生活では周囲に迷惑をかけてしまうため。自分を取り巻く社会状況が変化したため。何かが起こったときに、耐えられず、すぐに医療が必要となる傾向は強くなっているように思います。

介護力の低下という言葉だけで説明はつくのでしょうか。家族の、そして地域の介護力はニーズにマッチしていない状況が続いています。大きく言えば「高齢化」したため、と言えるのかもしれません。そして、それが「急速」に起こりました。

そのため、システムのあちこちに急激に軋みが生じています。もしかしたらこの変化が緩徐であれば、色々な場所に負担や業務がゆっくり分散され、表向き問題は明らかでは無かったのかもしれません。現場はスタッフが、現在の人員でどのように業務を回すか、最適化を図っています。

もちろん、放射線の問題が何も無い訳では決してありません。ただ起こっていることは、この場所特有の問題では無く、日本の医療状況に普遍的な、ただし今後解決しなければならない非常に大きな「高齢化」に対する問題です。

高齢化、医療者不足、こういった問題は、今回初めて明るみになった話では全くありません。日本全国どこでも問題となり、医療者であれば必ずぶつかる話です。もとから相双地区(主に福島県の浜通り北部)に医療者は多くありません。解決策は何か? 一言で見つかるならば、だれも苦労しません。

医療者に死にものぐるいでは働け、といっても残念ながら医療もそんなに「予備能力」はありません。ただ予算が付いて、何かしらの箱物ができて、としても解決できません。

もう一歩踏み込んで、現在の様々な検査や検診に関しても同じことを感じます。甲状腺や、内部被曝検診、xxの病気がxx人、xx Bq、xx検診を追加せよとなるのもわかるのですが、どうやってそれを続けるかもみんなで考えなければ、本当にこのままでは立ちゆかなくなります。それは医療者が考えるべきなのか? 「しょうがない」とかいわれてしまうのかもしれませんが、ここをどうするのか、建設的で現実的な議論をして、ノウハウを貯めていくのか。対立している暇も余裕もありません。みんなで進みたいと思います。



南相馬市立総合病院の原澤先生と荻上チキさんの番組の収録中の一コマ。
原澤先生は、震災後2011年11月から仮設住宅に通い続け、予防接種事業や、在宅診療部の立ち上げなど、尽力されています。

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