◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《75》 固有名詞で安心、安全を語ってみた 2013年8月12日

福島県新地町のバンビりんご園に行ってきました。新地町は、相馬市の北側に隣接する町です。相馬市桜ヶ丘小学校の増子先生のご紹介です。りんご園は、相馬市の北、鹿狼山(かろうさん)の中腹にありました。8月の上旬でした。4~5センチくらいの大きさになった、まだ緑色のリンゴたちが迎えてくれました。

美味しいりんごを収穫するには、花が咲くころに優位な花を残し、実がなった後にさらに間引きを行うという、二段階の選別があることを、恥ずかしながら初めて知りました。

これらの作業を行う春から夏にかけての忙しい時期を過ぎ、少し落ち着いてきた頃だとおっしゃる畠さんに、リンゴ栽培の状況などを教えてもらいました。

実際に作って測っている農作物を見ると、「種類」によってセシウムの汚染具合が違うことを感じます。xx産であるから、という情報より重要なのは種類です。現実的に日常生活上でセシウムによる内部被曝を防ぐ際、何でもかんでもxx産がよくないとか、よいとか話をする必要はなく、セシウム汚染が起こりやすい食べ物に重点的に気をつけることが大事です。

逆に、高度に汚染された種類の食品に気をつけるだけで、大部分の内部汚染を防ぐことがわかっています。

お米の話や水の話も、このブログでご紹介させていただきました(67回、71回)。これらは地元のものであったとしても、大きな内部汚染の原因となることはまず無いことが、実際の検査からもわかっています。

しつこいですが、出荷制限のかかるような食べ物を未検査で、継続的に食べること(だけ)は、気をつけましょうと申し上げているゆえんです。この傾向は農作物だけではなく、家庭菜園で何を作るか選択する際も、水産物でも同じです。

リンゴは梅の実ぐらいの大きさの時に、放射性セシウムのBq/kgの値が最大になり、その後、実が大きくなっていくに従って低下していくことが分かっています。梅の実ぐらいの大きさの段階で、細胞の数は決まり、その後は水分を吸ってどんどん肥大してリンゴの実になります。その肥大する過程では、あまり放射性セシウムを取り込まないようです。リンゴの木の根が20~30センチ程度の深いところから養分を吸い上げていることなども関係しているのでしょう。

最終的に、バンビりんご園の2012年の検査結果ではCs137で1Bq/kgは超えなかったそうです。ちなみに、リンゴは他の一般食品と同じく、100 Bq/kgが基準値で、それを超えない限り出荷制限がかかることはありません。最大で100に対し、1以下ですから十分に安全です。

今年のリンゴの検査が、また収穫の時期に行われます。徐々に食物の汚染度も経年的に下がってきている現在、昨年度の結果よりもさらに今年度は低くなると推定されます。

それでも震災の年は、Csを下げるために、土にゼオライトをまいたり、幹を洗ったり、葉を洗ったり、セシウムをブロックするためのカリウムを増やしたりしたそうです。

他の農作物でも同様ですが、カリウムを増やすと他のミネラルの吸収が阻害され、歯ごたえが悪く、なめらかでなくなり、そして味が悪くなります。検査結果を気にする余り、実がゴソゴソになることもあって、上記のような震災の年に行われた対策は、現在ではバンビりんご園では行われていません。

こんな話は、一切の固有名詞を除いて話をすることもできます。食品選択は個人の自由です。でも現実に、こんなに丹精込めてリンゴを作り、こんなに頑張っている人がいることを、どうやったらもっと伝えることができるのでしょうか。逆に固有名詞で語ることが安心をもたらす面もあると思います。

もちろん、リンゴの放射性物質は完璧にゼロまで測ることもできなければ、他の何もかもと同じく完全にゼロでもないのでしょう。加工の仕方を変えると、より高い値になって検出限界を超えることもあり得るのでしょう。けれども、リンゴも(お米や水などと同じく)、セシウム汚染が高度になりやすい食材ではなく、大きな内部汚染の原因となるものではありません。

去年バンビりんご園のリンゴをたくさん頂き、実がしっかりして、非常に美味しかったので、是非一度お話を聞きたいと思っていました。場所は鹿狼山だから、バンビだそうです。とはいえ、狼はいません。



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