◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《57》 検出限界を考えない運用だった 2013年4月6日

ベラルーシ・ベトカ地区でのホールボディーカウンター(WBC)検査状況についての続きです。

前回、紹介したような方法を用いて、定期的な検査が行われていました。今現在でも1日あたり60〜80人程度の検査をしています。人口が2万人弱の地域ですから、受診率はそれ程低くないように思います。

少なくともこの病院では、内部被曝についてのカットオフは1mSv/年で設定されています。その値以上であれば、医師による生活指導や、早期の再検査などが行われています。

年齢などにもよりますが、20000〜40000Bq/bodyぐらい検出して初めて1mSv/年ぐらいの被曝量になると計算されます。昨年度の最大値はCs137で92000Bq/body、4.6mSv/年。1mSv/年を超える方は、計算すると全体の0.1%程度でした。

現在の日本では、こうしたレベルでセシウム137の慢性被曝が検出されたことは、私自身が見たことがありません。1mSv/年を超える方が0.1%という数も、対象を限れば違うかもしれませんが、日本だとその桁には到達していません。

南相馬市立総合病院と、ひらた中央病院では20Bq/kg以上の方には積極的な介入をしているので、キツメすぎるのかもしれません。

気になっていたのは、データの精度についてでした。

南相馬市で検査を開始した当時、データの精度が担保されているかというのは大きな問題でした(33回にも紹介しています)。

特に検出限界という値をどのように計算し、どのように取り扱いすればよいかは困難を極めました。この点(だけではないですが)、早野先生には感謝しても感謝しきれません。

ベトカでの結果用紙を見て、妙に納得してしまいました。

Cs 137の結果ですが、 200±200 Bq/body、1000±400 Bq/bodyという数字が並んでいました。ND(検出せず、検出限界以下)という表示はないのです。

つまり、検出限界がどの程度なのかということは気にしていません。200±200 Bq/bodyのスペクトルを見ましたが、案の定セシウムの山は全く見えませんでした。この値は器械付属のスペクトル解析ソフトが自動計算した値です。

ご存知のように、放射性物質は完全にゼロまで計測することは理論上できません。遮蔽を強くし、時間をかければかけるほど、細かくまで計測できるわけですが、それでもゼロを保証することはできません。

「検出限界は?」と質問すると、「そんなものを考える必要があるのか?」という返事が返ってきました。

「介入が必要なぐらいの値で無ければよいでしょう?1mSv/年が数万Bq/bodyぐらいに相当するので、それ以下であればよいでしょう」

200±200 Bq/bodyという結果であっても、そこから200Bqを使い、そのままSvを計算して結果を表示していました。日本で検査を始めた時と全く同じ状況でした。そもそも検出限界周辺の値の取り扱いについて、値が安定しないことも気にしていませんでした。1mSv以下なのだから、いいでしょう、と。

この部分をしっかり詰めること無く、器械を運用し続けていたことが、日本での当初の1000±5000 Bqみたいなむちゃくちゃ結果表示が出たことに影響したのだろうと思いました。だからあの時、器械を作る会社の担当者と話して、話が噛み合なかったのだ、と妙に納得してしまいました。

もちろん、南相馬などで器械が稼働し始めた直後、多くの方で器械の検出限界と、実際の体内のセシウム量が近かったという状況も重なり、データが不安定になったという事実もあります。

少なくともベトカ地区病院では上記のような状況でした。他の場所は違う運用をしているのかもしれません。実際にウクライナでの形は少し違ったように記憶しています。しかしながら、この運用(検出限界以下も関係なく値を出して行く)で、特に問題が起きないことは驚きでした。

検出するかしないかに特化しすぎている日本の現状は、考え直す必要があると思います。

同じ検出限界を出すと言っている器械でも、微妙に検出限界が異なってしまうような現状で、未検出かどうかだけを追求しても、正確性を欠きます。しかしながら、検出するかどうかが心情的に大きなインパクトを持ってしまうことも事実です。0(検出しなかった)か、1(検出した)かは、わかりやすいのですが、難しい問題です。



ベトカのWBCの結果集計表、検出限界以下と思われる値もそのままでした。

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