◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《56》 住民の健康を見まもる難しさ 2013年3月30日

ベラルーシのベトカ地区病院に訪問した際のお話の続きです。

受診率の低下についてどのような工夫と対応をしてきたかについてもお聞きしました。「高齢者や、もしかしたら一番汚染食品を摂取しているかもしれない人に限って検査を受けにきてくれないことがある」という話をしました。

少し苦笑し、「そうだよね。難しいよね。(うちも同じ)」といって、二つほど話を聞くことが出来ました。

こんな逸話でした。村の酒屋さんの前で、ある医師が立っていました。何をしているかというと、酒を買いに来る村人を待っているのです。なんと酒を買いにきた人を捕まえ、血圧を計測するのです。医師は血圧が高ければ、そこで生活指導をし、必要があれば外来受診を勧めました。

今の日本で同じことをやれば、酒屋と医者が喧嘩するだけで済むのでしょうか。
ともかく、この例は、ただ患者さんをクリニックで待つだけではなく、積極的に村の中に出て、住民の方々に内部被曝診療を含めたケアを行っていく、その必要性を説いているように思います。

南相馬市立総合病院では、できるだけ少人数の説明会や、住民の方々とふれあう場を作ることを以前から続けてきました。今ではお茶会や遠足、木工教室のようなものまで企画運営がなされています。

医療は基本的には待ち仕事です。外来も救急もそうですが、クリニックや病院に患者さんが何かしらのことに困って受診するのを待っている仕事です。もちろん、色々な主催の講演会や勉強会は多くありますが、現状を少し超えて、お互いに触れ合いながら顔の見える距離で情報交換をする必要があるのだろうと思います。

ほとんど全ての健診、ワクチンのこと、生活習慣病のこと、かぜの抗生剤、何でも点滴、すぐ精密検査、リビングウィル、巷にあふれる根拠があるのか分からないxx食品などの広告、などなど……同じような話だと思っています。

しかしながら、問題もあります。医師がその時間中、(病院としてキャッシュフローを産む)診療に携わっていないという点です。そんなことを医師がするだけで済む医師余りの状況では全然ありません。

周りから見ればさぼっている、医者がすべき仕事をしていないといった、批判を強く受けることもあります。現実には、通常の業務は何ともない顔をしてこなしつつ、その上で空いた時間に町の中に入りながら必要な情報を伝えて行く。そんな芸当をしなければなりません。

出来ない理由を思いつくのは誰でも簡単にできることですので、コツコツやっていくしかありません。
もう一つは実際に(生活習慣病やその他の)診療を行う際に、定期的に内部被曝検診を受けるようにしつこく話をする、または既存の健診に組み込むというものでした。企業健診に組み込んだり、労働者に対する研修会を開いたりするそうです。

ベトカ地区病院では、病院の中に入ってすぐのところにホールボディーカウンター(WBC)が設置してあります。外来を受けた際、他の健診に来た際、その他の理由、いつでも検査をしたいときに自分の登録番号から検査をすることが出来ます。
当院では2012年4月から産婦人科が再開しましたが、その時点より当院に妊婦検診でいらっしゃる方は、全員必ずWBCでの検査スケジュールが組まれます。

定期的に妊婦検診やその他で受診されるたびに、内部被曝検査も行っています。このような形で例えば、高血圧や生活習慣病関連で、定期的に外来受診される方を対象に、長い待ち時間の間に内部被曝検査を受けられるようにする。今の段階で、そんな次元にすぐに到達できるとは思えませんが、実現可能性があるのか検討することが出来ればと思っています。

その他、内部被曝検診を受けて、その結果についての書類が入学試験やその他の申請などに必要(無ければ申請できない)という話もありました。これも日本で実現可能性がある話なのかはわかりません。

いずれにせよ、検診を受けない人はその人の自己責任という言葉だけで全てを終わらせるわけにはいかないと思います。

(続く)



ベトカ地区病院での検査機 椅子型でした。

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