◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《18》 アップルペクチンは放射能に効くか? 2012年7月7日

アップルペクチンをご存知でしょうか?食物繊維の一種、通常の食品にも含まれているもので、ゲル化剤としても機能します。歴史も長く、古くからジャムやマーマレードを作る際に粘度をつけるために用いられてきました。アップルのペクチンなので、リンゴの皮の部分に多く含まれる食物繊維成分ということになります。

EUの委員会では、安全な食べ物とされ摂取量の制限はありません。(もちろん、ひたすら食べ続けるのは良くない可能性はありますが。)アメリカでもgenerally recognized as safeとされている。そんな食品(医薬品ではありません)です。

ご存知の方も多いかと思いますが、ウクライナやベラルーシで子供達の内部被曝を軽減させるために、しばしば使用されてきた食品でもあります(Nesterenkoらによる)。

いくつかの論文や報告書があり、実際に服用中は体内のセシウム量が軽減したという報告が散見されます。ウクライナに行った際も、医療者から効果があるとお聞きすることがありました。日本国内でも是非南相馬の方々にということで、当院に送ってくださる方がいらっしゃいました。

外来で若いお母さんから質問されることもあります。

今年2~5月、当院でアップルペクチンの臨床試験を行いました。先日のNHKでも紹介されています。

倫理委員会通過後、WBCによる検査時にセシウム134+137の合計が20Bq/kg以上の値であった成人に、試験へのボランティアでの参加をお願いしました。アップルペクチンの内服が体内セシウム量の軽減に寄与するかを調べるため、です。

セシウム134+137の合計が20Bq/kg以上というのは、その時期の南相馬市立病院の検査結果の中では、値が高めに属する方々です。一般的な内部被曝の注意事項を説明し、栄養士がどのような食品を食べているかお聞きしました。そして、現在のセシウムによる内部被曝はほとんどが食物からおこっていること、生活上の注意を説明、1カ月後にホールボディーカウンター(WBC)の再検査を受けていただきました。

そして、その1カ月後の再検査でも、セシウムの値が検出される方に対して、アップルペクチンを4週間食べていただき、また1カ月後に再検査するという方法です。全部で18人の方にご協力いただきました。もちろん、今回のことが臨床試験である旨、同意いただいた方ばかりです。

結論としては、やや減少率が大きくなったものの、明らかな効果を認めませんでした。内服期間前4週間のセシウム減少率は8.4%であったのに対して、投与期間中は11.4%でした。(有意差なし。)内服による健康被害は認めませんでした。
もちろん、もっとたくさんの方々で検査をすれば結果が異なるのかもしれません。しかしながら、今回のような結果になった理由がいくつか考えられます。

一つ目は、ペクチン自体がセシウムの吸収阻害剤(今まさに吸収されようとしているセシウムをブロックするもの)であり、排泄促進剤(実際に体内に取り込まれてしまったセシウムを外に排泄する作用をもつ)ではないということです。便秘や下痢の治療にも使われていたように、ペクチン自体は、セシウムの吸収を消化管中で阻害するものです。

以前、このブログでご紹介させていただいたように,今現在、スーパーから購入する食品にはリスクはほぼ無いに等しく、検査をしていない地産のものや、セシウムの値が高いと報告されているものを継続的に食べるといった行為にリスクが存在することを述べてきました。

恐らく、今現在の南相馬での食生活には、(チェルノブイリ事故後の周辺の農村と違い)毎日数十ベクレルのレベルでセシウムが含まれている訳ではないので、逆説的にアップルペクチンの効果が全く見られてないのではないかと考えています。

二つ目は、実際にベラルーシにて使用されていた、アップルペクチンの効果があるとされた体内のセシウム量に比べて、今現在の南相馬で検出されるセシウムの値が桁違いに低いからというものです。

Nesterenkoらの報告にて、1500人程度の小児にアップルペクチンを食べてもらい、セシウム量が下がったというものがあります。その中でのセシウムの値はセシウム137で100~300Bq/kgといった値です。アップルペクチンを食べると、50Bq/kgぐらいまで下がったと報告されています。

今回の試験では、そんな値を出す人は一人もおらず、(幸いなことに)セシウム134+137の合計が20Bq/kg以上を見つけることが全く難しいという状況でした。もっと値の高い状況で、使用すると効果が見られた可能性はあるかもしれないと考えています。

セシウムは徐々に排泄されます。お母さん方からも、早く排泄するにはどうすればよいか?という質問をよく受けます。しかしながら、まず大事なのは排泄を早めることではなく、上から今後摂取することを抑えることであると話しています。今回は、成人を対象に行いましたが、いずれにせよ、積極的にアップルペクチンを子供に食べてもらうべきだという考えにはならないと思います。

アップルペクチンを用意くださった、関さん、岡本さん、宮下さんを始めとするNPO法人のウェイトコントロール協会のみなさん、マネジメントを請け負ってくださったちいき進かがくの木下さん、そして何より今回のトライアルに参加していただいた市民の皆様に感謝申し上げます。

写真は、結果の報告会での写真です。木下さんが話をしています。



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