◆ 内部被曝通信 福島・浜通りから ◆

《104》 セシウムだけ測っていれば大丈夫なのか? 2014年3月11日

突然ですが、質問です。
半減期の長い放射性物質と、短い放射性物質、どちらが体に影響があるでしょうか?

ある人が、こう言います。ストロンチウムは半減期が50年だから骨に入り込んだらなかなか出て行かないと聞いた。半減期は長い方が危ないと思う。内部被曝検査はセシウムを測っているので、ストロンチウムなど他の放射性物質を見ていないのはおかしい。

それに対してある人が、いやいや甲状腺に関連する放射性ヨウ素のような半減期の短いもののほうが危ないと思う。8日で半分になると聞いた。短時間で一気に浴びてしまう方が、長時間かかるより危ないでしょう?

こんなやりとりを外来でよくやっています。外来の感覚では、半減期の長いものの方が危ないとおっしゃる方のほうが多い印象です。

元々が意地悪な質問なのですが、長い方が危ないとおっしゃる方に続けて聞いてみます。私たちの体の中には放射性カリウムが存在します。その半減期は約12億年です。じゃあ、放射性カリウムの方が圧倒的に危ないですね?

いや、そんなはずは………と思われるでしょうか。カリウムもセシウムやストロンチウムと放射性物質としての名前は異なりますが、同じくベータ線(電子)やガンマ線(光子)を放出します。放射線として放出するものは同じです。

やや意地悪い質問で申し訳ありません。答えを言うとどちらでもありません。放射線の影響は量の問題です。

半減期が長い、または体内に止まる時間が長い放射性物質でも、その体内に存在する間に被曝する量が少なければ、影響は小さいのです。逆に体内に存在する時間が短くても、その間に被曝する量が多いなら問題です。

「半減期の短い方が……」と答えられた方も同様です。結局は量の問題です。1合の日本酒を一気飲みするのと、10日かけてゆっくり飲むとでは前者の方が危ないのと同様、同じ分だけ放射線を浴びる際には、一時にまとめて浴びるよりは、分かれて時間をかけて浴びる方が影響は小さくなります。ここでは、同じ分だけの放射線を浴びる際には、という前提が必要です。

つまり、半減期の長短だけで体への影響は規定されません。
ストロンチウムとセシウムがよく引き合いに出されますが、セシウムの体内の半減期(生物学的半減期)は4カ月程度、それに対して、ストロンチウムはカルシウムと似た挙動をして、吸収された一部が骨などに入るので、半減期は数十年とか言われています。

確かに長く体内にとどまると聞いて、気持ちのいい物では全くありませんが、やはり量の問題です。1Bqのセシウムと1Bqのストロンチウムを摂取した際、その実効線量(体への影響の度合い)は、半減期の長さや、放出する放射線の種類を考慮して、ストロンチウムの方が約2.2倍ぐらいであることがわかっています。同じBqであるという前提の元です。

では、そのセシウムとストロンチウムの存在比はどの程度でしょうか。いくつかの場所で何度も計測されていますが、地上で大体1000対1程度であることがわかっています。つまり誤差はあれ、上記の2.2倍を使うと、体への影響の度合いは、かなりざっくりとですが、1000対2.2と考えられます。

プルトニウムについても同様です。もちろん同じだけあれば考える必要がでるわけですが、プルトニウムはストロンチウムのさらに1000分の1程度です。
このため、セシウムが重点的に計測されているのです。セシウムで大局を十分判断できます。逆に、ストロンチウムだけの話をする意味はありません。

チェルノブイリの事故では、ストロンチウムの比率が今回の事故に比べて圧倒的に多かったので、セシウムとストロンチウムの影響の比率が9対1程度だったので、今回と話が違います。

このためにストロンチウムを測らなくていいということにはなりません。ベータ線しか出さず、微量になるのでなかなか計測も大変ですが、魚なども含めて淡々と検査が進む必要があると思います。

話を戻しますが、セシウムで大局が分かるという話をしました。そのセシウムを体内で測っても、ほとんどの方から検出しない状況になっています。そして、その値は一般的に体の中に存在し、半減期が12億年で、ベータ線やガンマ線も放出する放射性カリウム50~55Bq/kgよりも十分低い値であることがわかっています。

もう少し言うなれば、放射性カリウムは人によってばらつきがあります。筋肉量やカリウムの多い野菜や果物などの食事量に影響を受けます。その個人間のばらつきの範囲内以下に放射性セシウムの量がおさまっていることも付け加えておきたいと思います。



東大で各学部を越えたシンポジウムが開催されました。伊東乾先生のご尽力です。ますますそれぞれの専門を越えた情報交換と知識の結集が必要と感じました。Babyscanについて発表されている早野先生。

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